散弾銃というのはなかなか売りにくい商品です。法律の規制はあるし、目新しい新製品というものがなかなか出てこない。これがマクドナルドみたいに、必ず売れる定番があって、季節ごとにちょっと買ってみたくなる新製品があると、だいぶん商売がしやすいのでしょうが…そういうわけにもいかんのですねぇ。
さて、目新しいものが出にくい散弾銃の中でも、2004年に発表された「ブローニング シナジー」は出色の出来で、製造開発をしたミロクの久方ぶりのヒット作です。
(写真)
もう、パッと見がこれまでの上下2連と違って、シュッとしていて格好良いですね。店に在庫が入ってくると、射歴の長い常連さんも見たがります。店の関係者も欲しがります。こんな製品、ひさしぶりですね。500万円以上するペラッチなんか、みんなビビッて触りたがりませんから。
(レシーバー)
上下2連の機関部というのは、100年も前に機構が完成されてしまって、これ以上差別化のしようがない、というのが一般的な見解でした。シナジーも、純粋に機能に関わる機構という意味では、もちろん上下2連の王道にのっとっているのですが、わざわざ新設計にしてまで実現されたオリジナルの部分はこれ、上下にコンパクトなレシーバーです。
同じ仕事をする機械なのですから、コンパクトにまとまっている方が全体として設計の自由度は高く、より使いやすい銃をデザインすることが可能となります。では、上下2連として「使いやすい」とは、どういうことか。壊れない、メンテナンスしやすい、撃ち味が良い…色々な見方があるでしょうが、シナジーの場合は「撃ち味」、特に、銃身の跳ね上がりの小ささがその特徴であるといえます。
銃弾を発射した時の反動は、銃口の反対方向、銃身の後ろ向きにかえってきます。そのため、銃身は元台をつける肩のまっすぐ前に位置していた方が、銃口の跳ね上がりは小さくなります。
もちろん、銃の重さとタマの重さ、射出速度が同じなら、反動の運動量そのものは同じになり、銃口の跳ね上がりが小さくても、肩を後ろに押すショックがきつくなってしまいます。それを軽減しているのが、オリジナル状態でかなり厚みのあるパッドと、銃口近くにもうけられたガス・ポートです。
(写真 パッド、ガスポート)
パッドはオリジナルで2枚付属。身長160~185センチ程度の射手であれば、パッド交換のみで適当なプル・レングスに調整できます。
ガスポートは射出ガスの一部を横に逃がす機構で、射出のショックが気持ち軽くなります。反面、発射音が高い感じになるのと、孔にホコリがつきやすいので、銃にはチリ1つあっても許せないという神経質な人は要注意です。
ついでにシナジーを扱う上での注意点を言えば、激芯の設計に甘さがあり、タマを選ぶ傾向があります。RXPをはじめとして、相性の良い装弾を使えば不安はありませんが、どんな弾でも使いたい、安い弾を撃ちたい…という方にはお勧めできません。また、設計が新しいだけに、修理や部品交換は特約店にお任せいただきたいところです。扱いの簡単さで言うと、ミロクの既存のモデルに軍配が上がります。
シナジーのデザインの素晴らしいところは、レシーバーの低さを活かした上で、先台から元台まで流れるような独特のフォルムを形成していること、台木がシンセティックやそれなりのグレードでも安っぽさを感じさせないところにあると思います。木目の良い台木だとますます格好良いのですが、それなりの価格帯であっても満足できる所有感を得られるというのは、実に現代的だと思います。シルエットで見ても「それ」と判る銃なんて、なかなかありませんよ。