最近、兵庫県ではことにライフルの許可が出にくいので、あまり熱心に紹介しておりませんが、すばらしいライフルが入荷しております。
ウィンチェスター M70 スーパーグレード .300ウィンチェスターマグナム

スーパーグレード、ひかえめに、弾倉のプレートに刻印があるだけ。
ウィンチェスターM70といえば、「昔はよかったけど、大量生産でダメになった非業のライフル」みたいに言われ、それも半分は正解で、1960年代後半から1970年代の、粗製乱造の時期は、そりゃーもう目も当てられないガチャガチャのライフルでありました。その時期のM70も在庫してますけど、次の整理のときにスクラップにします。あんなもん、値段つけるとしても、5,000円にもなりません。許可申請の証紙のほうが高くつくくらいです。(それでも欲しい、という方は、早めにご連絡を…タマ200発買ってくれたら、現状渡し無料で結構です)。
ところで、今在庫しているM70のSG、つまりスーパーグレードは、タダのM70とは別物。車で言ったらタダのランサーとランサーエボリューション、シビックとシビックタイプRくらい違うのです。
まず、M70が大量生産によって、どこがダメになったか。いちばんハッキリ判るのは、エキストラクター(薬莢のかき出し金具)の構造。

左がレミントンM700およびウィンチェスターM70の通常品。ボルトフェイスの左にある金属のでっぱり(エキストラクター)が、薬莢の溝にかみ合って、薬室から引っ張り出すのです。このエキストラクターは、バネで薬莢にかみ合うようになっており、ニートフックという方式です。薬莢とエキストラクターをかみ合わせるのが簡単な反面、強度は劣ります。
M70のPre-64およびSGは、右の構造になっています。エクストラクターが、大きくて固定式。単純だけれど頑丈で、信頼性が高い。これをクロー(爪)タイプと言います。
M70のPost-64は、装填機構を単純化するために、ニートフックを採用したのですが、このつくりが悪く、ツメが折れるトラブルが多発しました。
現代のライフルのほとんどは、ニートフックのエキストラクターを採用しておいます。レミントンM700、ホーワ、ウェザビー、サコーもニートフックですね。つまり、二ートフックだからダメ、クローだから良い、と言うわけでもないのです。しかし、とにかく、ニートフックの時代のM70は出来が悪かったのは事実。

スーパーグレードは、ご覧の通り、クロータイプが復活しています。
さて、象徴的なエキストラクターの構造はもちろん、機関部全体や銃身の精度も、なかなかのものです。作りがよいことで有名なサコーに見劣りしません。
また、マグナム口径の銃は、銃身寿命が短いので、中古銃を買うときは注意が必要です。.308や30-06なら、5,000発程度(米軍の基準だと10,000発が寿命だそうですが…)は実用範囲内ですが、マグナムの場合は1,000発以降は保証できません。
中古のライフルについて「ライフリングがしっかり残っています」というセールストークを見かけますが、マグナム口径ではライフリングより先に薬室の先端部が、弾頭との接触で変形し、精度が低下します。これではライフリングの状態がよくても、タマはまとまりません。いい加減な鉄砲やさんは「マグナムは衝撃が強いから、当てるのが難しい」とか言いますけど、すでに薬室の寿命が来ていることも、ままあるのです。
この銃は、実射200発…せいぜい300発ですかね。この先がベストコンディションになるくらいの、いちばんいいところです。ストックの木目も良いし、20万円を切る価格はお買い得だと思います。